
本サイトでは久しぶりに単体グラボのレビュー翻訳・解説記事となります。AMD dGPUにしてはめずらしく(失礼……)かなり注目されているRDNA4/Navi4コアファミリーのミドルローレンジ「AMD Radeon RX 9060 XT」を搭載したサファイア製グラボとなります。筆者は本稿を翻訳、記事化しててかなり欲しくなってしまいました。
AMD Radeon RX 9060 XT
AMDのdGPUとしては異例の「期待値高止まり状態」を保っているRadeon RX 9070 XTおよびRX 9070シリーズのひとつグレード下、RDNA4/Navi4コアのミドルローレンジdGPUがRadeon RX 9060 XTです。AMDのdGPUに限らず、NVIDIAのdGPU含めて「6番台」という最もユーザーボリュームが期待できるレンジなので、ここの出来次第で世代の評価も決まってしまうといっても過言ではありません。
Radeon RX 9070 XT/RX 9070の下位グレードとはいえ性能の高さで未だに人気を保つ同コアのミドルローレンジはどのくらいの性能を発揮するのでしょうか。また、AMD dGPUとして前世代となるRX 7000シリーズ(RDNA3/Navi3コア)からどのくらいレベルアップしているでしょうか?
| Price | Cores | ROPs | Core Clock | Boost Clock | Memory Clock | GPU | Transistors | Memory | |
| RX 7600 XT | $400 | 2048 | 64 | 2470 MHz | 2755 MHz | 2250 MHz | Navi 33 | 13300M | 16 GB, GDDR6, 128-bit |
| RTX 4060 | $270 | 3072 | 48 | 1830 MHz | 2460 MHz | 2125 MHz | AD107 | 18900M | 8 GB, GDDR6, 128-bit |
| Arc A770 | $250 | 4096 | 128 | 2100 MHz | N/A | 2187 MHz | ACM-G10 | 21700M | 16 GB, GDDR6, 256-bit |
| Arc B580 | $250 | 2560 | 80 | 2670 MHz | N/A | 2375 MHz | BMG-G21 | 19600M | 12 GB, GDDR6, 192-bit |
| RTX 4060 Ti | $380 | 4352 | 48 | 2310 MHz | 2535 MHz | 2250 MHz | AD106 | 22900M | 8 GB, GDDR6, 128-bit |
| RTX 5060 | $300 | 3840 | 48 | 2280 MHz | 2497 MHz | 1750 MHz | GB206 | 21900M | 8 GB, GDDR7, 128-bit |
| RX 7700 XT | $450 | 3456 | 96 | 2171 MHz | 2544 MHz | 2250 MHz | Navi 32 | 26500M | 12 GB, GDDR6, 192-bit |
| RX 9060 XT | $350 | 2048 | 64 | 2530 MHz | 3130 MHz | 2518 MHz | Navi 44 | 29700M | 16 GB, GDDR6, 128-bit |
| Sapphire RX 9060 XT Pulse OC | $365 | 2048 | 64 | 2705 MHz | 3291 MHz | 2518 MHz | Navi 44 | 29700M | 16 GB, GDDR6, 128-bit |
| RTX 5060 Ti | $380 | 4608 | 48 | 2407 MHz | 2572 MHz | 1750 MHz | GB206 | 21900M | 8 GB, GDDR7, 128-bit |
| RTX 5060 Ti 16 GB | $430 | 4608 | 48 | 2407 MHz | 2572 MHz | 1750 MHz | GB206 | 21900M | 16 GB, GDDR7, 128-bit |
| RTX 4070 | $400 | 5888 | 64 | 1920 MHz | 2475 MHz | 1313 MHz | AD104 | 35800M | 12 GB, GDDR6X, 192-bit |
| RX 7800 XT | $540 | 3840 | 96 | 2124 MHz | 2430 MHz | 2425 MHz | Navi 32 | 28100M | 16 GB, GDDR6, 256-bit |
| RTX 4070 Super | $600 | 7168 | 80 | 1980 MHz | 2475 MHz | 1313 MHz | AD104 | 35800M | 12 GB, GDDR6X, 192-bit |
| RX 7900 GRE | $650 | 5120 | 160 | 1880 MHz | 2245 MHz | 2250 MHz | Navi 31 | 57700M | 16 GB, GDDR6, 256-bit |
| RTX 4070 Ti | $700 | 7680 | 80 | 2310 MHz | 2610 MHz | 1313 MHz | AD104 | 35800M | 12 GB, GDDR6X, 192-bit |
| RTX 5070 | $600 | 6144 | 80 | 2325 MHz | 2512 MHz | 1750 MHz | GB205 | 31100M | 12 GB, GDDR7, 192-bit |
| RTX 4070 Ti Super | $860 | 8448 | 96 | 2340 MHz | 2610 MHz | 1313 MHz | AD103 | 45900M | 16 GB, GDDR6X, 256-bit |
前世代の6番台「Radeon RX 7600 XT」との比較はもとより、対NVIDIA GeForce RTX 5060/RTX 5060 Ti、そしてRadeon RX 7700 XTとの性能差に注目です。個人的には少し前に発表されたRadeon RX 7700との比較も気になりますが、まだRadeon RX 7700のデータはでていないので、スペックからRX 7700 XTの8割くらい?の性能を想定しています。
AMD公式サイトによると、Radeon RX 9060 XTは「ネイティブ 1440p (Ultra 設定) - 30 以上のゲームで RX 7600 XT より平均 46% 高速」と謳っています。
モノリシック構造
前世代のRadeon RX 7600 XT/RX 7600は、上位RDNA3/Navi3コアdGPUのチップレット構造とは違いモノリシック構造をとっていました。本稿で紹介するRadeon RX 9060 XTも同様にモノリシック構造ながら、上位RDNA4/Navi4コアと同様の4nmプロセスルールにて製造されています。そのため、6nmプロセスルール製造のRadeon RX 7600のNavi 33系に比べてトランジスタ数が倍増しています。
この新しいモノリシックRDNA4アーキテクチャ演算ユニットは、IPCで大幅な世代間向上を実現し、新たなシェーダー実行効率化とアウト・オブ・オーダーメモリ管理システムを導入。AMDによれば、
- RDNA4 RTアクセラレータはRDNA3比でレイトレーシング性能を100%以上向上
- AIアクセラレータは多数の高スループットデータ形式をサポート
- FSR4のハードウェアアクセラレーションを実現
- FSR 2.2のシェーダベースアップスケーラーをAI機械学習ベースの新アップスケーラーに置き換え
- 全パフォーマンスプリセットで画質を大幅に向上
とアピールしています。さらに、2025年後半にはFSR4の大幅アップデート「Project Redstone」を準備しています。
フルスペックNavi 44
Radeon RX 9060 XTはNavi 44コアのフルスペック版を搭載しています。32 CU(演算ユニット)を搭載し、2,048ストリームプロセッサ、64 AIアクセラレータ、32 RTアクセラレータ、128 TMU、64 ROPsを構成。128-bit幅のメモリインターフェースを介して16GBのVRAMを搭載します。20Gbps GDDR6メモリで、メモリ帯域幅は320GB/sです。
NVIDIAはGeForce RTX 5060/RTX 5060 Tiで28Gbps GDDR7を採用しましたが、AMDは、アーキテクチャレベルのメモリ管理技術をもって差を補っているとアピールしています。
個人的に注目しておきたい部分は、PCI-Expressの16レーンをフルに利用する点です。Radeon RX 7600やRX 6600では8レーンに留まっていました。また、Ryzen 7 5700G「Cezanne」APUなど、PCIe Gen 3サポートにとどまる旧環境においてもGPUが十分なPCIe帯域幅を確保できる点です。
Sapphire PULSE AMD Radeon™ RX 9060 XT OC 16GB GPU

Sapphire PULSE AMD Radeon™ RX 9060 XT OC 16GB GPUは、同社ラインナップの中ではコストパフォーマンスを重視したPULSEシリーズに属するRadeon RX 9060 XT搭載グラボです。
所謂オーバークロック仕様で、ゲームクロックが2700MHz(AMDリファレンスは2530MHz)で動作するよう設定されていますが、全長24cmで2スロット厚といったコンパクト基板設計を採用。メーカー仕様通りの標準的な8ピンPCIe電源コネクタを搭載しています。

Sapphireのシリーズは他にNITRO+やPureシリーズがありPULSEは下位シリーズですが、品質において妥協のない品質を保ちます。

The Pulse series graphics cards from Sapphire are typically positioned below the company's NITRO+ and Pure series, but are uncompromising in terms of build quality, boasting a cooler design that prioritizes low noise.
SapphireのPulseシリーズは通常、同社のNITRO+やPureシリーズの下位に位置付けられますが、製造品質において妥協はなく、低騒音を優先したクーラー設計を誇ります。
Sapphire Radeon RX 9060 XT Pulse OC 16 GB Review - An Excellent Choice | TechPowerUp
NITRO+ AMD Radeon™ RX 9060 XT OC GPU

PURE AMD Radeon™ RX 9060 XT OC GPU

ゲームベンチ
Baldur's Gate 3
Released: 2023 — API: DirectX 11 — Engine: Divinity Engine 4.0
1080p

1440p

Baldur's Gate 3では、dGPUのチカラ関係ほぼ想定通りのスコアをみせていると思います。AMD Radeon 7700 XT以下で、NVIDIA GeForce RTX 5060 Tiにやや及ばない程度。より負荷の高い1440pの場合でもチカラ関係変わらず。
Counter-Strike 2
Released: 2023 — API: DirectX 11 — Engine: Source 2
1080p

1440p

CS2では、GeForce RTX 5060より下、RTX 3060と同レベルとなっていますが、ゲームエンジン的にNVIDIA dGPU有利なのでこんなものでしょう。少し気になるのがRadeon RX 7700 XTと少し差が大きい点、1440Pでも144fpsくらい出てほしかったというところです。
Dragon Age Veilguard
Released: 2024 — API: DirectX 12 — Engine: Frostbite
1080p

1440P

Dragon Age Veilguardでは、前世代のRadeon RX 7700 XTに肉薄するスコアを叩き出しています。
Hogwarts Legacy
Released: 2023 — API: DirectX 12 — Engine: Unreal Engine 4
1080p

1440p

筆者的に意外な結果だったのが、ゲームエンジンにUnreal Engine 4を採用しているHogwarts Legacyです。そもそもNVIDIA dGPUに有利なゲームエンジンというイメージでしたが、本ラインナップの結果だけを見るとAMD dGPU頑張っています。さらにRadeon RX 9060 XTは、そこまでGeForce RTX 5060 Tiに差をつけられているわけではない、という。
Monster Hunter Wilds
Released: 2025 — API: DirectX 12 — Engine: RE Engine
1080p

1440P

モンハンワイルズではNVIDIA GeForce RTX 5060 Tiを上回っており、Radeon RX 7700 XTとは誤差レベルまで詰めることが出来ています。モンハンワイルズにおいては同一dGPUでもメモリが多いほうがfpsでるようですね。
消費電力
Gaming

Maximum

消費電力においては優秀と言っていいのではないでしょうか。同世代の対NVIDA GeForce RTX 5060 Ti比でほぼ同レベル。前世代のRadeon RX 7700 XTよりかなり下がっており、RX 7600 XTと同レベルである様子がみてとれます。
まとめ
新しい世代のdGPUがでると前世代のワンランク上のモデル(RX 9060 XTならばRX 7700 XT)と比べがちです。ベタなパターンであれば旧世代7番台dGPUより新世代6番台dGPUのほうが総合的にあがっている、というものですが、Techpowerupの同レビューのみをチェックすると、性能は「やや下」で消費電力は「かなり下がっている」という結論です。とはいえ、アーキテクチャやコアは変わっているとはいえ、RX 9060 XTはモノリシック構造のコアでRX 7700 XTはチップレット構造のコアとなっており単純に並べることはできないとも考えます。
したがって、Radeon RX 9060 XTの場合は旧世代7番台dGPUの代替というより、同世代となるNVIDIA GeForce RTX 5060 Tiとガチンコで戦うためのdGPUという方向性が見えます。Techpowerupの同レビューのみをチェックすると「いい感じで戦えている」イメージです。ベンチ含めてゲームエンジンはやはりNVIDIA dGPU有利な場面が多いので実fpsに差がでてしまいがちですが、昨今はドライバ含めてAMD dGPUの安定っぷりはおすすめだと感じています。
そしてAMD dGPU搭載グラボといえばやはりSapphireが鉄板です。他メーカーよりやや高い値段がついている場合がありますが、グラボの仕上がりは美しいものばかりです。


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AMD Radeon RX 7700を予想してみる
公式にリリースがあったAMD Radeon RX 7700ですが、本稿を執筆しながら実性能を妄想してみると……
- 1080pならば基本的にRadeon RX 9060 XTと同じくらいのゲーミング性能
- 1440pや2160pなど負荷が高くなるとRadeon RX 7700が微妙に上回る
- 消費電力はモノリシックのRX 9060 XTのほうが低い
といった感じでしょうか?Radeon RX 9060 XTと比べて大きくは変わらないかもしれないのと、過去アーキテクチャモデルになるので、販売されるならばモデル数も数量も限定されそうな気がします。
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