AMD Ryzen 7 5700X3Dレビュー。2024年にリリースされたSocket AM4のX3Dモデルは買い? /TechSpot
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AMDが新たにリリースしたRyzen 7 5700X3Dは、「Ryzen 7 5800X3Dとして販売できなかった『クロック仕様を満たしていないシリコン』を再利用したCPU」です。仕様を満たしていない場合、通常であれば廃棄してしまうのですが、AMDはそれを廃棄せず、ややダウングレードした仕様でコストを抑えたモデルとしてリリースしました。
AMD Ryzen 7 5700X3D
CPUを製造する場合、目標とされる仕様のものを製造しますが全てにおいてその基準を満たすわけではありません。そういった基準に満たないものをクロック違い等でリリースし、単一ラインで複数のモデルを展開するのが常です。ざっくりとした説明ですが、これら製造過程において発生する事柄を「歩留まり」と呼びます。製造し続けると歩留まりが改善されていくことも、新しいアーキテクチャを採用したCPUのリリース時、歩留まりが悪く流通個数が少ないことがあるのも、皆さまご存じの通りです。
Ryzen 7 5700X3Dは、「Ryzen 5000X3Dシリーズ」において歩留まりの関係上リリースしなかった(できなかった)仕様のもの、ということです。モデルナンバー通りRyzen 7 5800X3Dのワンランク下というスペックですが、販売価格はスペック差以上に「下に設定」され、2024年時点においてお買い得なモデルになっています。Socket AM4プラットフォームのコストパフォーマンスと合わせて魅力的なCPUです。
こういったCPUがリリースされるなど、Socket AM4はしばらくの間延命されています。しかし今後Socket AM5プラットフォームに完全移行するため、全くの新規でこのCPUを搭載するセットを「今」買うのは将来的に見てコストパフォーマンスが悪くなる場合もあることは注意しておくべきでしょう。
AMDは、CES 2024でSocket AM4向けの新CPU4モデル、Ryzen 7 5700X3D、Ryzen 7 5700、Ryzen 5 5600GT、Ryzen 5 5500GTを追加発表しました。さらにAMDのテクニカル・マーケティング・マネージャーであるDonny Woligroski氏は、PC Worldの取材に対し「Socket AM4プラットフォームは当分の間、あるいは少なくとも古いDDR4メモリーの製造コストがDDR5より高くなるまではサポートを継続する」と明言しました。
AMD、DDR4メモリの生産コストがDDR5よりも高くなるまでSocket AM4プラットフォームのサポート続行へ - 帯域幅256ビット|AMD好きの自作PC速報
スペック
AMD公式サイトからRyzen 7 5700X3Dと5800X3Dのスペックをチェックしてみます。
Ryzen 7 5700X3D
- CPUコア数:8
- スレッド数:16
- 最大ブースト・クロック:最大 4.1GHz
- ベースクロック:3.0GHz
- L1キャッシュ合計:512KB
- L2キャッシュ合計:4MB
- L3キャッシュ合計:96MB
- デフォルトTDP/TDP:105W
- Processor Technology for CPU Cores:TSMC 7nm FinFET
- パッケージ:AM4
- PCI Expressバージョン:PCIe 4.0
- メモリータイプ:DDR4
- メモリー・チャネル:2
- Max Memory Speed:2x1R/DDR4-3200, 2x2R/DDR4-3200, 4x1R/DDR4-2933, 4x2R/DDR4-2667
- 価格(本稿執筆時Amazon調べ):約4.3万
Ryzen 7 5800X3D
- CPUコア数:8
- スレッド数:16
- 最大ブースト・クロック:最大 4.5GHz
- ベースクロック:3.4GHz
- L1キャッシュ合計:512KB
- L2キャッシュ合計:4MB
- L3キャッシュ合計:96MB
- デフォルトTDP/TDP:105W
- Processor Technology for CPU Cores:TSMC 7nm FinFET
- パッケージ:AM4
- PCI Expressバージョン:PCIe 4.0
- メモリータイプ:DDR4
- メモリー・チャネル:2
- Max Memory Speed:2x1R/DDR4-3200, 2x2R/DDR4-3200, 4x1R/DDR4-2933, 4x2R/DDR4-2667
- 価格(本稿執筆時Amazon調べ):約5.5万
最大ブーストクロックとベースクロックの差が0.4GHz、日本国内では約1万円程度の差がある、というのがこの2モデルの違いです。このスペックと価格差がベンチマークでどうでるのかチェックしてみましょう。
ベンチマーク
Cinebench 2024
Cinebenchマルチコアテストでは振るわない結果になっています。TechSpotのレビューではクロックが低い点を指摘しています。
Ryzen 7 5700X3DはRyzen 7 5700Xより9%遅い。これはクロック速度が11%低いことに起因しており、前述の通り、96MBの大容量L3キャッシュはこの特定のテストでは役に立たない。Ryzen 7 5800X3Dと比較すると、このテストでは7%の性能低下が見られる。今日(こんにち)の基準では、全てのコアに負荷がかかったワークロードにおいてRyzen 7 5700X3Dは特に印象的とは言えず、6C12TのRyzen 5 7600Xに約20%遅れをとっている。
Cinebenchシングルコアテストでは順当な結果となっています。TechSpotでは、Ryzen 5000シリーズのZen3コアCPUとRyzen 7000シリーズのZen4コアCPUの違い、Zen4コア採用CPUの性能アップが印象的だと記しています。
とはいえ、末尾X3Dモデルが採用する「巨大な3D V-Cache」はこのベンチでは何の利点もありません。さらにいうならばCinebenchの結果がCPUの全てでもありません。やはりゲームのフレームレートをチェックすべきでしょう。
Baldur's Gate 3
Baldur's Gate 3においてRyzen 7 5700X3Dは5800X3Dより3%遅いだけ。CinebenchではRyzen 5 7600Xの後塵を拝していましたが流石に上回ってきています。驚くのは、Ryzen 9 7950XといったZen4コアのフラグシップCPUと同等のパフォーマンスを発揮しています。
そもそも3D V-Cache非搭載(非X3Dモデル)CPUは、このゲームではそれほど良いパフォーマンスを発揮しない。
もう一つ注目するならばIntel Core i5-13600K/14600KとCore i7-13700K/14700Kの差でしょうか。シングルコアの性能も重要視されるゲームといえます。
Cyberpunk 2077
Cyberpunk 2077では、Ryzen 5 7600Xと同等、Ryzen 7 8700Gより上、といった結果です。同じSocket AM4プラットフォームの非X3Dモデル群と比べるとワンランク上の結果を叩き出していることから、末尾X3Dモデルのゲーミング性能の高さを示しています。
既にSocket AM4プラットフォームのZen/Zen+コア、Zen2コアのCPUを使っているユーザのアップグレード先としてかなり有望なCPUといえるのではないでしょうか。
Hogwarts Legacy
Hogwarts LegacyはRay Tracingを有効にしてテスト。Ryzen 7 5700X3Dは、5800X3Dより5%遅く、非X3DモデルのRyzen 7 5700Xより8%の良い結果を示しています。
Zen4コア群と比較すると、Ryzen 7 8600Gに近しい結果を出していますが、Ryzen 5 7600Xより11%遅く、Ryzen 7 7800X3Dとは29%の差が開いています。
Socket AM5プラットフォーム対応のZen4コアCPUとは違いが出ていますが、プラットフォーム含めたコストを引き合いに出すならば、Ryzen 7 5700X3Dの良さが出ている結果と言えるかもしれません。
Assetto Corsa Competizione
Assetto Corsa Competizioneの場合、Zen4コアCPUに対して優位に立つだけではなく、Intel Core i5-13600K/14600Kとは同レベル、Core i7-13700K/14700Kには近い結果をも出しています。贔屓目な言い回しをするならば「はるかに新しいアーキテクチャをベースとした、価格が高いCPUに匹敵するパフォーマンスを発揮した」といえるでしょうか。
Assassin's Creed Mirage
Assassin's Creed Mirageの場合でもIntel Core i5-13600K/14600Kより上の結果を叩き出しました。非X3DモデルやRyzen 7 8700Gも上回っています。
10ゲーム平均
今まで見てきたバランスの良さは10ゲーム平均のグラフで顕著になります。
消費電力
Baldur's Gate 3
Cyberpunk 2077
Baldur's Gate 3、Cyberpunk 2077のゲームプレイ時のシステム総消費電力をざっくり見ると、AMD Ryzen 7 5700X3DはもちろんZen3コアCPUの効率は流石の一言。公証TDP 65Wの非X3DなRyzen 7 5700Xと(多少の上振れ下振れがあるものの)おおまかに同じレベルであることがわかります。Ryzen 8000Gシリーズの消費電力にも注目しておきたいところではあります。
まとめ
既に述べた通り「AMD Ryzen 7 5700X3Dは、既にSocket AM4プラットフォームを利用しているユーザのアップグレードパスとして最適」であり、さらにゲームプレイ時にさらなるCPUパワーが必要な人にとって非常に魅力的なモデルです。もちろんRyzen 7 5800X3Dも良い選択ですが、国内販売価格で約1万円の違いが悩ましい点。単純にRyzen 7 5700X3Dの方がお買い得ですが……。
いちから新しいPCを買おう、自作しよう、という場合、コストをある程度かけてもSocket AM5プラットフォームの将来性をとったほうが良い選択となる場合があるため、Ryzen 7 5700X3Dは、Socket AM4プラットフォームのアップグレードパス先として最適解である、というのがまとめの一言です。