2nd.PCや3rd.PCといったサブPCの構成を考えたり実際に購入するというのは意外と楽しいものです。という経験をまたしてしまったので、本稿執筆時においてサブPCを組むならこの構成がおすすめという記事です(構成を妄想しているときが一番楽しいのです)。
サブPCを組んでみよう
本サイトのポリシー通り、AMD縛りで考えたとき、本稿執筆時において格安にそろえられそうなのはSocket AM4プラットフォームでしょう。今後CPUやマザーボードの新製品はでないであろう旧プラットフォームのためアップグレードは不可能です。しかし、用途によっては全然使えるパフォーマンスを未だ保ち続けています。
用途を考える
メインPCの場合、予算内という縛りはあるでしょうけれど、所謂「快適に動作できるミドルレンジの汎用的な構成」に落ち着きがちです。そのようなメインPCがある場合にサブPCを用意するなら、特定の動作のみにフォーカスしたミニマルな構成であったり、小さい筐体サイズでどこまで発熱を捌けるか、といったチャレンジを考えた構成だったり……一般的な構成とは少し違うポイントを考慮してみると楽しい経験ができるでしょう。新たな知識と実践を想定すること、それらが楽しい考察タイムになるわけです。
筆者は自作歴が長いので、余ったPCパーツが多少あります。それを使いまわすPCを考え組みましたが、かなり古いまたは微妙に古い規格(Windows 11のハードウェアの要件ギリギリ外れているCPUなど)が多く、無駄に自作歴が長いのが反対にネックになった感がありつつも、どれをどのように使い回して完成させるのか?ということを「楽しく」悩みました。
上記構成において念頭においた用途は「YouTube等の動画を垂れ流しながらタブを多く開いたブラウザを複数立ち上げてwebサイト閲覧が達成できればよい」というものです。最初の構成はCPUにAMD A10-7850Kを選びました。したがって、Windows 11をインストールすることは不可能です。ならば、とLinuxを選択しました。昨今のLinuxならば、ブラウザを複数使うような使い方ならWindowsと変わらないフィールで使えるデスクトップ環境を構築できるだろうという思惑もあり、結果そういった環境を構築することができましたが、それなりに重いディストリビューション(Ubuntu Studio)を選んだので、結局AMD Ryzen 5 3600とB550チップセットマザーボードの中古を追加で購入してしまいました。
Ubuntu Studioのシステム要件
Wikipediaから引用(雑な要件ですね)。
必要なシステム要件 | 最低条件 | 推奨条件 |
---|---|---|
CPU | Intel Core 2 Duo 同等(amd64) | Intel Core i5 同等、それ以上(amd64) |
RAM | 4GB | 16GB |
ディスク容量 | 32GB | 64GB |
Socket AM4プラットフォームをおすすめ
「今更Socket AM4?」と思われるかもしれませんが、Linuxをインストールしてクライアントとして使うなら全然使えますし、Socket AM5環境より格安に揃えられるので現状かなりおすすめです(本稿執筆時点での価格)。
そして、今更ながら改めてSocket AM4情報を探している際に非常にためになった記事がTom’s Hardwareのローバジェットマザーボードラウンドアップです。
マザーボードのレビューというとハイエンドモデルばかりが並ぶのが定番であり、本記事に取り上げられるようなローバジェットマザーボードのレビューはほぼピックアップされません。それだけでも興味深い内容ですが、さらに言うなら現在(本稿執筆時点)も新品で購入可能な製品が並んでいる、という意外とタイムリー(?)なレビューとなっています。
Tom’s Hardwareレビューラインナップ
- Gigabyte B550M DS3H(公式サイト)(Amazon)
- MSI B550M Pro-VDH Wi-Fi(公式サイト)(Amazon)
- ASRock B550M-HDV(公式サイト)(Amazon)
- ASUS Prime B550M-K(公式サイト)(Amazon)
ピックアップされた4製品は、ほとんどが1万円以内で購入可能(近しいモデルの場合もあり)です。
Compared to what we’ve looked at in the past on B550, these boards skip many of the accouterments we’re used to seeing, like RGB lighting, shrouds and heatsinks on some items, and premium power delivery.
That said, all of the boards here come with four SATA ports, 1 Gb Ethernet and at least one M.2 socket, but the similarities tend to stop there. And all are of the Micro ATX variety. Some boards have heatsinks on some of the VRMs (Gigabyte and MSI) and one even includes integrated Wi-Fi (MSI).
過去のB550マザーボードと比較すると、これらのモデルはRGBライティングやシュラウド、ヒートシンク、高級電源回路など、従来見慣れた装備の多くを省略している。
とはいえ、全モデルに4つのSATAポート、1Gbイーサネット、最低1つのM.2ソケットは搭載されているが、共通点はほぼそれだけに留まる。また全てMicro ATX規格である。一部の基板(GigabyteとMSI)ではVRMにヒートシンクが採用され、1モデル(MSI)には内蔵Wi-Fiも搭載されている。
Four Cheap Micro ATX B550 Motherboards Tested: Low Price, Big Value? | Tom's Hardware
テスト用CPUはAMD Ryzen 9 3900Xを採用し、可能な限りオーバークロックをして負荷をかけています。格安マザーボードにとって過大な負荷がかかった状態でのVRMの温度に注目です。
主な仕様・特徴比較
VRM(Voltage Regulator Module)構成の数字だけを見るとGigabyte B550M DS3HもしくはMSI B550M Pro-VDH Wi-Fiが良さそうです。この2モデルはシンプルながらVRM用ヒートシンク標準装備です。ASRock B550M-HDVのみ、CPU補助電源コネクタが4ピンのみとプアになっています。
Gigabyte B550M DS3H:8-Phase (5+3)
MSI B550M Pro-VDH Wi-Fi:7-Phase (4+2+1)
ASRock B550M-HDV:6-Phase (4+2)
ASUS Prime B550M-K:6-Phase (4+2)
- 拡張性:メモリスロットは多くが4スロット(Gigabyte, MSI, ASUS)で最大容量128GB 対応、ASRock B550M-HDVはM.2スロットが1つのみ
- USB:MSI B550M Pro-VDH Wi-Fiのみ、前面USB 3.2 Gen 1 5Gbps Type-Cコネクタあり。ASUS Prime B550M-KのみバックパネルにUSB 3.2 Gen 2 10Gbpsポートあり
- 付属機能:機能/BIOSはどのマザーボードもミニマム。RGBや派手な装飾、豪華なヒートシンク、豪華なオーディオコーデックなどは実装されていない
ASRock B550M-HDVは、Gigabyte B550M DS3HやMSI B550M Pro-VDH Wi-Fiに比べて2ランク下、ASUSに比べて1ランク下の基盤設計という感じなで、横並びで比べてしまうのは少しかわいそうな気がします。
テスト内容 & 性能
テスト環境は、CPUにRyzen 9 3900X、dGPUにNVIDIA GeForce RTX 2070、マザーボードにはTom’s Hardwareレビュー時の最新BIOSを導入。ベンチマークには合成ベンチや実用アプリ、実ゲームなどを含みます。
Benchmark Settings | |
Synthetic Benchmarks and Settings | Header Cell - Column 1 |
PCMark 10 | Version 2.1.2177 64 |
Row 1 - Cell 0 | Essentials, Productivity, Digital Content Creation, MS Office |
3DMark | Version 2.11.6866 64 |
Row 3 - Cell 0 | Firestrike Extreme and Time Spy Default Presets |
Cinebench R20 | Version RBBENCHMARK271150 |
Row 5 - Cell 0 | Open GL Benchmark - Single and Multi-threaded |
Application Tests and Settings | Row 6 - Cell 1 |
LAME MP3 | Version SSE2_2019 |
Row 8 - Cell 0 | Mixed 271MB WAV to mp3: Command: -b 160 --nores (160Kb/s) |
HandBrake CLI | Version: 1.2.2 |
Row 10 - Cell 0 | Sintel Open Movie Project: 4.19GB 4K mkv to x264 (light AVX) and x265 (heavy AVX) |
Corona 1.4 | Version 1.4 |
Row 12 - Cell 0 | Custom benchmark |
7-Zip | Version 19.00 |
Row 14 - Cell 0 | Integrated benchmark |
Game Tests and Settings | Row 15 - Cell 1 |
The Division 2 | Ultra Preset - 1920 x 1080 |
Forza Horizon 4 | Ultra Preset - 1920 x 1080 |
ほとんどのマザーボードがストック状態では大きな差はなくそれなりのスコアを出してしまいますが、ASRock B550M-HDVは重いマルチスレッドタスクでサーマルスロットリングが発生。VRM温度をチェックすると、負荷時に電力が高め傾向あり。Gigabyte B550M DS3Hがピークで約230Wを記録。他モデルも216-222W。アイドル時は47-50W程度です。
ベンチマークスコアの一部を引用します。ピックアップしている低価格帯マザーボードとワンランク上以上のモデルの比較もあり、かなり興味深い結果がみてとれます。できればTom’ Hardwareの結果を全てチェックしてほしいと思うのですが、ベンチマークの数字だけをみるならば、所謂格安なマザーボードでも上位モデルと同じような性能を出す場合がほとんどだったりします。
PCMark10(Photo Editing)
PCMark10(Spreadsheet)
PCMark10(PowerPoint)
PCMark10(Microsoft Edge)
Corona 1.4
HandBrake
The Divsion 2(DX12)
Forza Horizon 4(DX12)
消費電力
MSI B550M Pro-VDH Wi-Fiは、低消費電力で一歩抜きん出ています。個人的に、シンプルな構成の格安マザーボードのほうがもうちょっと低いのかな?という先入観がありましたがあまり変わらない以上に上位モデルのほうが抑えられている結果です。電源設計の差でしょうか?
MSI B550M Pro-VDH Wi-Fiが最も耐性が高く、95Wクラスの12コア/24スレッドCPUをオーバークロックした場合でもサーマルスロットリングは発生しにくい結果でした。Gigabyte B550M DS3Hでオーバークロックした場合は4.3GHzや4.2GHzでは不安定、4.1GHz付近で妥協。ASUS Prime B550M-Kは、12コア/24スレッドCPUのオーバークロックには辛く、スロットリングを早めに起こす傾向です。ASRock B550M-HDVの場合は、ハイエンドCPUではストック運用でも安定性に課題あり、ということが述べられています。
総合評価と推奨
ベストチョイス:MSI B550M Pro-VDH Wi-Fi
この中ではMSI B550M Pro-VDH Wi-Fi が最もバランス良く、コスパで頭一つ抜けているという評価です。ワンランク上のマザーボードと同等の基本性能が垣間見えます。
Tom’ Hardwareの記事ではあえてオーバースペックなCPUでレビューされていますが、本来想定される構成は、もっと低スペックのCPU(オーバークロックしない)、dGPU/グラボは利用しない(つまりiGPU搭載の"末尾Gモデル")と想定される価格帯のマザーボードのはず。そもそも本稿がサブPC向けというお題なので、例えば、Ryzen 5 5600GTあたりがジャストなCPUだと思います。
おすすめLinuxディストリビューション
Windows 10のサポートが2025年10月14日に終了いたします。次は……と悩んで結局Windows 11を新規で導入しない、移行しないとなればおすすめはLinux。大昔は何世代か前のハードウェア(パーツ)じゃないとドライバがないといったこともありましたが、今はリテール市場に並んでいるコンサバなパーツであれば認識しがち、動きがち、という感じがします。マウス・キーボードでの直感的な操作はWindowsっぽいので、違和感なく使える可能性が高いです。
導入メリットは、「プライベートまでWindowsの画面見たくないけどPCでネット巡回したい!」とか「Windowsの画面をみて仕事のことを思い出したくない、忘れたい!」といったワガママを叶えてくれることです。
Ubuntu
Homepage | Ubuntu Japanese Team
もしかしたら名前をきいたことがあるかもしれないDebian GNU/Linuxベースの有名ディストリビューション。
Kubuntu
デスクトップにKDE Plasmaを採用したUbuntu派生ディストリビューションです。基本Ubuntuなので検索することで答えにたどり着きやすいこと、Windowsから移行する場合に比較的わかりやすいGUIを採用していること等が特長です。
こちらもDebian GNU/Linuxベース。簡素であることよりも、多くのソフトウェアと最新の技術を使用することにより、誰にでも使いやすいLinuxシステムを提供することに焦点を当てています。
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