マルチGPU、大昔にあったCrossFireまたはCrossFireX(NVIDIAならSLI)は、ミドル~ミドルハイレンジGPUを複数接続することによってハイエンドGPU並みかそれ以上の性能を出せるかもしれない、という夢のような技術でしたが、実際の問題としてマルチGPUにした際にシングルと同程度の性能しかだせない場合が多く(ゲーム側で対応があまりなかった)、思ったように普及しなかった感があります。
NVIDIAはNVLINKという名前でハイエンドレンジGPUのみ対応としていますが、コンシューマー向けGPUではAMD、NVIDIA共にマルチGPUは放棄した形といえます。
前置きが長くなりましたが、そんなマルチGPUに関するニュースがありましたのでご紹介します。
AMD Radeon RX 5700 & Radeon RX 5600 XT Paired Up In Multi-GPU - 70% Boost In Performance But With Lots of Issues
AMDのマルチGPU
AMDとNVIDIAはマルチGPUのサポートをほぼ廃止した状態です。
AMDのCrossfire(CrossFireX)はもはやありませんが、XDMAというPCIeを介してGPUをリンクするプロトコルに置き換えられ、一応マルチGPUは可能にしてあります。
AMDのXDMAリンクでは、DX12とVulkan APIを利用するゲームにおいて2つの「異なるGPU」を「異なる構成」で組み合わせることができます。
NVIDIAはNVLINKでハイエンドレンジGPUのみマルチGPUを可能としています。
Radeon RX5700とRX5600XTのマルチGPU
wccftechの同記事では、RX5700とRX5600XTのマルチGPU環境でDX12ゲームのパフォーマンスが71%程あがる、としています。
RX5700+RX5700ではなく、RX5700+RX5600XTという組み合わせです。
テスト環境
テストに使用したプラットフォームはAMD。
グラボは以下2種類。
(執筆当時)最新のAMD Adrenaline Radeon Software 20.2.1ドライバー。
消費電力
下記グラフはRX5700のシングルとマルチGPU時のフルロード時の消費電力を示しています。シングルGPU時は259.6Wですが、RX5700+RX5600XTの2枚挿しマルチGPU時は446.4Wです。
AMD Radeon RX 5600 XT & RX 5700 DX12 Multi-GPU Tests 71% Faster
RX5700+RX5600XTマルチGPUベンチ
3DMark Time Spy:RX5700+RX5600XT
RX5700シングルは8217ポイントですが、RX5700+RX5600XTマルチGPU時は14,156ポイント。全体結果はRX5700シングルは8508ポイント、RX5700+RX5600XTマルチGPU時は13,1342ポイント。
RX5700シングルに比べてRX5700+RX5600XTマルチGPU時は72%の性能アップとなります。
AMD Radeon RX 5600 XT & RX 5700 DX12 Multi-GPU Tests 71% Faster
Rise of the Tomb Raider:RX5700+RX5600XT
RX5700のシングルとRX5700+RX5600XTマルチGPU時の実ゲームfps比較その1はRise of the Tomb Raider。ゲーム内設定は最高設定(非常高と表記)。
シングルGPUの平均値は116.9fpsですが、RX5700+RX5600XTマルチGPU時の平均値は191.3fpsです。
AMD Radeon RX 5600 XT & RX 5700 DX12 Multi-GPU Tests 71% Faster
Strange Drigade:RX5700+RX5600XT
fps比較その2はStrange Drigadeで、ゲーム内設定はUltra。
シングルGPUの平均値は138.6fpsですが、RX5700+RX5600XTマルチGPU時の平均値は228.8fpsです。
AMD Radeon RX 5600 XT & RX 5700 DX12 Multi-GPU Tests 71% Faster
ベンチ所感
wccftechでも触れられていますが、ゲーム側で対応しているのであればかなり有利なfpsをだしていきます。RX5700とRX5600XTを2個買っても10万以内で収まる場合が多いでしょう。
値段的にはNVIDIA GeForce RTX2080 Superの1枚と同じくらいに収まりつつ、それと同じレベルか上の性能がでれば儲けもの。
ですが、やはり2枚挿しによる消費電力の高さは割に合いません。また、対応するゲームが限られている点も注意が必要で、現状、AMD的にもほぼサポートしていない技術となることも考えると微妙な判断かと思います。
もしこれから、技術的にもゲーム的にもマルチGPU環境のサポートを改めてやるのは結構夢がありますがどうなんでしょうか?