Image via Hygon linkedin
2年前に話題になったAMD Zenアーキテクチャベースの「Dhyana」CPUのベンチマーク記事がanandtechで公開されています。
DhyanaというCPUは、ChinaメーカーのHygonがAMDからライセンスを取得して設計販売するCPUで、AMD Zenアーキテクチャ(Zen1)ベース。昨今の米中関係を踏まえつつ成り立ち含めて「キワモノ」的なCPUの興味深いレビューでしたので紹介いたします。
性能はAMD Zen1のデッドコピーのような結果になっていますが、なぜこのような結果なのかは後程説明いたします。
In 2016, through a series of joint ventures and created companies, AMD licensed the design of its first generation Zen x86 processors to be sold into China. The goal of this was two-fold: China wanted a ‘home grown’ solution for high-performance x86 compute, and AMD at the time needed a cash injection.
Hygon Dhyanaとは
Hygon Dhyanaの成り立ちについてはgigazineに詳しい記事があります。anandtechの記事内でも言及されていますが、AMDはキャッシュが欲しかった、チャイナ側は「独自の」ハイパフォーマンスx86ソリューションが欲しかった、という理由が簡単な説明になるでしょうか。
anandtechの記事にあるように、AMDがHygonという合弁会社を通して販売網を強化、もしくはチャイナメインランド販売向けのx86 CPUを欲したわけではなく、「China wanted a ‘home grown’ solution for high-performance x86 compute」というわけで、Hygonという合弁会社だけの話ではない、ということですね。
今回anandtechがテストに使用したのは8コアのES品で、モデル名等はありません。ヒートスプレッダに「C86」と刻印されるだけです。C86とはChinese x86を意味しているようです。
中国のチップメーカー・Hygonがx86プロセッサ「Dhyana」の生産を開始したことが報じられています。アメリカでは核開発への影響を懸念して、2015年にIntelのXeonプロセッサを中国で販売することを禁止しており、AMDがこの仕組みを構築したことに驚きが広がっています。
gigazineの記事にあるような理由で、IntelはチャイナメインランドでのXeon販売を禁止しています。それに対してHygon Dhyanaは複雑な形態でAMD Zen1ベースのx86 CPUを成り立たせています。
もともとx86に関してはIntelとAMDの間でクロスライセンス契約が結ばれていて、さまざまな制約があります。そこで、x86のIP(知的財産権)についてAMDからライセンスを受けたHMCが、Hygonにさらにライセンスを出し、Hygonがx86チップを設計。設計はいったんHMCに売却され、HMCがチップを生産して、再びHygonから「Dhyana」プロセッサとして販売する、という形が採られることで法的な問題点をクリアしているとのこと。
AMDのZenマイクロアーキテクチャをベースに中国メーカーが「Dhyana」プロセッサの生産を開始 - GIGAZINE
anandtechの記事内には以下のような流れでHygon Dhyanaが出来上がっていると説明しています。販売先はチャイナメインランドで外に出てくるものではないと思われます。
- AMD licenses core design to HMC with suggested SoC layouts
- HMC provides floorplan to Hygon
- Hygon suggests changes to HMC
- AMD engineers at HMC approve/reject changes
- HMC offers final floorplan to Hygon, ready to take orders
- Hygon orders wafers / silicon die from HMC
- HMC approaches GlobalFoundries for manufacturing
- GlobalFoundries achieves particular frequency/yield on new design
- HMC sells completed silicon to Hygon
- Hygon performs packaging on the silicon in China
- Hygon sells completed CPUs into China
Testing a Chinese x86 CPU: A Deep Dive into Zen-based Hygon Dhyana Processors
また、上記Ryzen8コアクローンのほかに、Hygon Dhyana PlusというEPYC32コアクローンも存在し、テストされています。
これらを踏まえるとベンチマークの結果に(ある程度ですが)理解が進むと思われます。
マザーボード
マザーボードは一般的なマイクロATXサイズでメモリはDDR4。PCIeスロットやSATAインターフェースがみえます。CPUは直付け。めずらしいのはVGA出力用のASPEED AST2500が乗っている点。
EPYCクローンCPUなど他にも興味深い画像がありますので是非ご参照ください。
拡張命令
CPU-Zではきちんと情報取得できない(?)ようです。もしくはこの情報がES品のスペックかもしれません。
Hygon DhyanaのES品は8コアCPUのようですが、1つしか認識していません。また、拡張命令セットの種類はAVXとAVX2、FMA3もサポートされるように見えますが、一部ソフトウェアでは検出できなかったとのこと。
これら拡張命令セットの認識と動作はベンチマークの結果にも表れているようです。
ベンチマーク
ベンチマーク結果は特徴的な2つのグラフを引用いたします。
Benchmarks: Windows - Testing a Chinese x86 CPU: A Deep Dive into Zen-based Hygon Dhyana Processors
AES Encodingは上記のような拡張命令セットの性能も反映するベンチですが、Ryzen 3 1200に及んでいません。Geekbenchの結果に至ってはAMDのローエンドCPUであるAthlon 200GEと戦う以前の問題。
まとめ
この結果から、Hygon DhyanaというCPUはWindowsに適した動作をしない、と感じました。
とはいえ「Windows動作前提ではないチャイナメインランドオンリーなCPU」であれば、このCPUに適したOSをビルドすればいいだけの話な気もします。
ライセンス周りや米中間の思惑等、いろいろ思うところが多いCPUですので興味深い内容の記事、というのは間違いありません。
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