取り外し可能なAMD Radeon RX 7700Sを搭載したノートPC「Framework Laptop 16」のレビュー記事をご紹介。本稿で紹介するFramework Laptop 16はノートPCのベアボーンというよりモジュール構成のノートPCという表現が適しそうなモデルです。
Framework Laptop 16
先行モデルのFramework 13.5からより大きな16インチのサイズになったことで、取り外し可能なディスクリートグラフィックス、タッチパッドスペーサー、LED、テンキーなどFramework 13.5よりもさらに多くのカスタマイズ用オプションパーツが選択可能となりました。
当該レビュー機は、AMD Ryzen 9 7940HSとRadeon RX 7700Sを搭載した最上位構成で、小売価格はおよそ2400米ドル。下位モデルのCPUはRyzen 7 7840HS、dGPUは未搭載となっていますが、ディスプレイは同じ16インチ、16:10、2560 x 1600、リフレッシュレート165Hz、VRR&FreeSync、IPSディスプレイが搭載されています。
メーカーによると、設計からAMDと緊密に協力し完成させたとアピールしています(そのため、NVIDIAやIntelのGPUオプションが直ぐでてくることを期待してはいけません)。
Framework Laptop 16はゲームプレイに問題ないスペックを搭載していますが、メーカー的にこのモデルをゲーミングノートPCと呼ぶことを避けており、マルチメディアユーザーやコンテンツクリエイターまで幅広いユーザーをターゲットにしています。もちろんゲーマーにも最適なノートPCと言えるでしょう。Framework Laptop 16の競合製品としては、HP Spectre x360 16、次期Dell XPS 16、Lenovo ThinkPad Z16、Apple MacBook Pro 16などが挙げられます。
Framework 13.5と同様に、DIY EditionとPre-built(ベアボーン)の2種類が用意されています。
Framework Laptop 16 公式サイト
Framework Laptop 16 スペック
- CPU: AMD Ryzen 9 7940HS (8C16T, 4.0GHz-5.2GHz, 35-54W)
- GPU: AMD Radeon RX 7700S (8 GB GDDR6, 912MHz, 100W TDP) / Driver: 23.20.24.15
- Memory: 32GB (ADATA, DDR5-5600, Dual-Channel, 46-45-45-90)
- Display: 16.00 inch (16:10, 2560 x 1600, 189 PPI, glossy/no, 165 Hz)
- Storage: 1TB (WDC PC SN810 1024GB)
- Soundcard: AMD HD Audio Controller
- Connections: 4 x USB 3.1 Gen2, 2 x USB 4.0 40 Gbps, USB-C Power Delivery (PD), 3 x DisplayPort, 1 x Fingerprint Reader
- Networking: MediaTek Wi-Fi 6E MT7922 160MHz Wireless LAN Card (a/b/g/n = Wi-Fi 4/ac = Wi-Fi 5/ax = Wi-Fi 6/ Wi-Fi 6E 6 GHz), Bluetooth 5.1
- Sizeheight x width x depth (in mm): 20.95 x 356.58 x 290.2
- Battery: 85Wh Lithium-Polymer
- Operating System: Microsoft Windows 11 Pro
- Camera Webcam: 1080p30fps
- Primary Camera: 2MPix
- Additional features: Speakers/Stereo, Keyboard/Chiclet, Keyboard Light/yes, Expansion Cards, dGPU bay, Numpad, 12 Months Warranty
- Weight: 2.418kg (Power Supply: 487g)
- Price: 2400 USD
筐体・デザイン
筐体は、端的に言うと先行モデルのFramework 13.5の進化版です。
両者の素材はほぼ同じだが、Laptop 16は取り外し可能な新しいパーツを考慮しても、第一印象が良くなるよう底面がより厚くより堅く感じられる。底面をひねったりキーボードをゆがめたりしようとしても、きしみはほとんどなく歪みも最小限だ。
Radeon RX 7700S performance debut: Framework Laptop 16 review - NotebookCheck.net Reviews
NotebookCheck.netのレビューでは「残念ながら1つだけ改善されていない点がある」として、HP Spectre x360 16やBlade 16のような他の16インチ級ノートPCと比べると、蓋はねじれやゆがみの影響を受けやすい印象。「ヒンジはまともかもしれない」がFramework 13.5と同じように蓋はまたしても筐体の最も弱い部分のように感じられる、と述べています。
寸法と重量は、dGPUモジュールを装着するか、小型の標準カバーモジュールを装着するかによって異なります。dGPUモジュールを装着した場合、Framework Laptop 16は他の16インチノートPCよりも明らかに重く、長くなります(標準カバーモジュールだけですでに270mmとかなり長い)。携帯性を重視するのであれば、AppleやDell、HPなど、より伝統的なノートPCを選ぶべきでしょう。
外付けアダプターは過去のものです。フレームワーク拡張カードシステムは、必要なポートを必要な場所に正確に選択できます。6つのスロットがあり、USB-C、USB-A、HDMI、DisplayPort、MicroSD、イーサネット、オーディオ、超高速ストレージなどから選択できます。最大240WのUSB-C電源アダプタに対応しているため、マシンの左右どちらからでも充電できます。
Framework | Choose Framework Laptop 16 DIY Edition (AMD Ryzen™ 7040
Framework Laptop 16 ベンチマーク
WebXPRT 4
Webブラウザのパフォーマンスは、現代的なPCの使い方において現実的なスペックパフォーマンスが見れるベンチだと感じるため、WebXPRT 4ベンチの結果をピックアップ。ノートPCのベンチなので電力制御の個体差を鑑みてチェックしなければいけませんが、昨今リリースされたCPUやGPUの組み合わせでは大きくは変わらない結果にみえます。
ついでに、自分が普段使いしている自作PC(AMD Ryzen 7 5700X+Radeon RX 6800)の結果もスクリーンショットを掲載してみます。バックグラウンドで軽微なタスクを回しつつ、Google Chromeでの結果です。
Mozilla Kraken
こちらもWebブラウザのパフォーマンスをチェックできる「Mozilla Kraken」のベンチ結果です。比較対象のIntel CPU搭載ノートPC勢に押されている結果ですが、トップスコアはAMD Ryzen 9 PRO 7940HS+Radeon RX 6550Mを搭載したLenovo ThinkPad Z16 Gen 2でした。
Mozilla Krakenでも自分のPCでチェックしてみました。スペックは上記の通りです。
AMD Radeon RX 7700Sのゲーミング性能
Radeon RX 7700S(最大100W)のグラフィック性能は、NotebookCheckによると概要は以下のような感じです。
TDPに応じてNVIDIA GeForce RTX 4060 Laptopに約10~30%劣る。例えば、性能はDell Inspiron 16 Plus 7630に搭載された60W RTX 4060 Laptopにかなり近い一方、140W RTX 4060 LaptopはRadeon RX 7700Sを大差で上回る。したがって、ゲーム性能はGeForce RTX 4050 LaptopとRTX 4060 Laptopの中間になると予想される。
Radeon RX 7700S performance debut: Framework Laptop 16 review - NotebookCheck.net Reviews
また、ほとんどのタイトルでRadeon RX 6700Sよりもわずかに速い、とも述べています。
Performance Rating - Percent
GTA V - 1080p Highest Settings possible AA:4xMSAA+FX AF:16x
Baldur's Gate 3 - 1080p High/Ultra, 1440p Ultra, 2160p Ultra
まとめ
dGPU取り外しを可能とするノートPCは過去、DellやLenovoのような大手メーカーが挑み失敗してきた歴史があります(近年目立つのはUSB4やThunderbolt経由のExternal BOXという形です)。「dGPU取り外し」を可能にするノートPC分野にあえて再度挑もうとするFrameworkはチャレンジングです。
FrameworkはノートPCを各モジュール構成にすることでdGPU交換だけではないメリットを提供しており、ユーザーのカスタマイズ性と故障時のアフターサービスで満足度を向上させています。しかし、各モジュールに分けたことによりサイズと重量の増大というデメリットが発生しています。今後、Frameworkがどこまでこのモジュール構成をフォローするか(追加モジュール発売等)もわかりません。サードパーティ製は言わずもがな、です。
そもそもノートPCの場合、CPUやGPU等の各コンポーネントだけをアップグレードできない製品のため、ユーザー的には「アップグレードするには新しいモデルを買うべき」というマインドの上に成り立っている製品という理屈もあります。サイズや重量にスペック的な価値を見出す使い方をする場合、そもそも既存メーカーの薄型ノートPCを買うでしょう。そういった市場で異彩を放っているFrameworkにはぜひ頑張ってほしいところです。
注目してみたいAMD Radeon RX 7700S自体の性能は、現状ではやはりNVIDIA GeForce RTX 4000 Laptopシリーズに一歩劣っていると言わざるを得ません。
本レビューはもっと深堀りした内容なので、ぜひチェックしてみてください。