煩雑になってきたAMD CPU情報まとめです。弊サイト記事をフックに動向をまとめてみようと思います。
AMD デスクトップ版Ryzen
2023年末時点の話
現状、AMDのデスクトップ向けRyzenは、最新Zen4コアのRyzen 7000シリーズと、ひとつ前のZen3コアRyzen 5000シリーズが混在しています。
AMD Ryzen 7000/5000シリーズ
2023年末、本稿執筆時においてはRyzen 7000シリーズのSocket AM5プラットフォームへの移行期間とも考えられる(一般ユーザーにとって)ため混在していますが、Ryzen 5000シリーズに対応するSocket AM4マザーボードはフェードアウトしている状況です。ただRyzen 5000シリーズの性能は十分高いものであり、新モデル投入の噂もあるほどです。
未だソケットAM4を使い続けているユーザーにとってアップグレードパスができることは嬉しい話です。
Zen4コアRyzen 7000シリーズは好調な滑り出しを経ており、売り上げという面においても特筆すべきCPUです。
このデータによると、販売されたCPUの約86.38%をAMDが占めたのに対しIntelはわずか13.62%でした。
これらは全てひとつの販売店の販売データであるため過度な推測は禁物です。
Ryzenシリーズは登場からiGPUの搭載は基本的になく、別途、iGPU搭載の「G」型番をラインナップするのが特徴でした。しかし、Ryzen 7000シリーズは小規模ながらiGPUを搭載するようになり、Intel CPUのようにiGPU搭載なしモデルはラインナップしなくなりました。
一転、AMDはOEM向け(※1)としてiGPUなしの「F」モデルを追加しました。OEM向けなので単体で購入することはできず、BTO PCメーカー等の完成PCを購入してはじめて使えるCPUです。
※1:ワールドワイドではOEM向け。中国向けは単体販売あり
iGPUがないので比較的格安に性能を得られる良いCPUという評となっています。
本稿執筆時におけるRyzen 7000シリーズとRyzen 5000シリーズの状況は以下の通りです。
- Zen4コア搭載のRyzen 7000シリーズ(Socket AM5プラットフォーム)
- Zen3コア搭載のRyzen 5000シリーズ併売中(※2)
- Zen3コア「G」モデルのRyzen 5000Gシリーズ併売中(※2)
※2:Socket AM4マザーは終息しフェードアウト
2024年以降の話
AMD Ryzen 8000シリーズ
2024年以降に期待されているデスクトップ向けRyzenは、Zen5コア採用のRyzen 8000シリーズと、大規模iGPUを搭載した「G」シリーズでしょうか。
AMDは、Zen5を2024年の早いタイミングにリリースする計画なのかもしれません。
アーキテクチャ名は「Zen5」で、そのフラグシップCPUと目される「Ryzen 9 8950X」のCinebench 2024のベンチマーク結果です。
Ryzen 8000シリーズでは大規模iGPU搭載「G」モデルの投入が予想されており、ノートPC向けZen4コア搭載CPU/APUを流用するとされています。iGPUはRDNA3系列アーキテクチャのコアを搭載することになるでしょう。ノートPC向けRyzen流用とはいえSocket AM5プラットフォームに載せるCPUになるので、メモリやストレージ周りなどの違いが出てきます。
さらに、Zen4cコアと呼ばれるZen4コアの小規模版を組み合わせたモデルもラインナップに加わる可能性もあります。コア違いの様々なバージョンが混在することが予想されるので、整理が難しい状況になりそうです。
新しいGシリーズでAMDは、4nmの「Phoenix」と「Phoenix 2」をデスクトッププラットフォームに投入し2つの異なる市場をカバーすると述べられています。
海外サイトでは、Ryzen 8000GシリーズのコードネームをPhoenix Point(Phoenix)やHawk PointといったノートPC向けRyzenのコードネームを付けて記し、区別しています。
もうすぐリリースされると噂される「AMD Ryzen 7 8700G」のベンチマークがリークされています。このCPU(APU)が属するRyzen 8000GシリーズはノートPC向けRyzen「Phoenix」のデスクトップPC版といったニュアンスのCPUです。
本稿執筆時点でわかるデスクトップPC向けRyzen 8000シリーズの概要は以下の通りです。
Zen5コア搭載Ryzen 8000はハイエンド~ミドルレンジ、Zen4コアのみRyzen 8000Gはミドルレンジ~ローレンジ/ビジネスクライアント向け、Zen4+Zen4c構成Ryzen 8000Gはローエンド/ビジネスクライアント向けという感じになるのかもしれません。
AMD ノートPC版Ryzen
2023年末時点の話
Hawk Point発表
ノートPC向けRyzenのトピックは、Ryzen 8000シリーズのうち「Hawk Point」が2023年末に発表されたことでしょうか。ちょうどIntelの最新ノートPC向けCPU(SoC)のMeteor Lakeアーキテクチャ「Core Ultra」の発表と同時期でした。
Hawk Pointは平たく言うとAIアクセラレータを強化したPhoenix Point(Phoenix)のリフレッシュ版です。CPUコアはZen4、iGPUコアはRDNA3を搭載することになります。
Ryzen 8040シリーズはAMDのノートPC向けCPUです。8C16TのZen4コア、ブーストクロック5.2GHz、RDNA3アーキテクチャのiGPUを搭載するRyzen 9 8945HSを筆頭に、9モデルで構成されています。
Phoenix Pointリフレッシュ版なので表面上は面白みがないかもしれませんが、そもそも純然たるCPU性能はIntelの新モデル「Meteor Lake」を上回る場面もあります。
両CPUで実施された全てのテスト結果の平均が示されており、Ryzen 7 7840Uが性能で28%リードしていることが示されています。
Zen4cコア発表
ぱっと見てIntelのE-Coreみたいに見えるマイクロコアな「Zen4c」コアの正式発表もありました。
低消費電力稼働時にパフォーマンスを発揮すると言われるZen4cは、既にデータセンター向けセグメントのEPYCに採用済み、コンシューマ向けにはハンドヘルド・ゲーミングPC向けの「Ryzen Z1」に採用されているマイクロコアですが、ノートPC向けCPUにもその性能を使っていこう、という発表です。
低消費電力時に速い「Zen 4c」コア
(中略)
Zen4cは既にサーバーセグメントCPUのEPYCに実装されていますが、コンシューマ向けとしてはRyzen Z1(非Extreme)にも実装されている、と述べています。
我々のアーキテクチャは、高密度(Zen 4c)とeコア(※注)ではその能力が大きく異なるということだ。
※著者注:eコアとはIntelのEコアを指すと思われます
2024年以降の話
Hawk Point搭載ノートPC/ミニPCリリース
2024年早々にHawk Point搭載ノートPCやミニPCがリリースされていく予定です。
Geekbenchのリークにより、ASUSがAMD Ryzen 9 8945HSを次期ROG Zephyrus G14に搭載する計画が明らかになりました。
Zen4コアとRDNA3 iGPUを組み合わせたこれらは、最近特にゲーム機を模したハンドヘルドPCで非常に人気がありますが、「ハンドヘルドPC系デバイスが実際にサポートする電力設定よりも高い場合に最高の性能を発揮する」ため「ミニPCサイズのほうが適している」とHotHardwareは同記事で述べています。
Geekomは、CES2024にてIntel Meteor LakeとAMD Hawk Point搭載のミニPCを発表すると予告しました。AMD Hawk Point搭載モデルにはノートPC向けdGPU「Radeon RX 7600M XT」を追加した機種もあるとのことです。
2024年~2025年の予想はこちらの記事にまとまっています。ノートPC向けZen5コアRyzenのリリースや、注目を集めるAIアクセラレータの強化などが予定されています。
AMDの2024年後半から2025年にかけてのプロセッサ ロードマップは、Zen5への道筋といえるでしょう。
先に述べたように、デスクトップPC向け「G」シリーズにもノートPC向けRyzenが流用されることが予想されています。また、ミニPCへの採用はノートPC向けRyzenです。そのため、自作PCユーザーも動向をチェックしておいて損はないでしょう。
AI PC
おそらく、2024年のPC業界にとって大きなキーワードになりうるのは「AI PC」だと思われます。
AI機能をさらに強化した「Windows 12」のリリースが控えているのがその理由です。「機能を強化した」と安易に表現してしまいましたが、実はそれ以上、OS全体に織り込まれ統合されたAI処理を行うWindows 12は、従来のPCパーツでは対応できないものになるとのこと。それを見越して既にAMDやIntelはAIアクセラレータの追加や強化を行っており、Windows 12リリースを迎えようとしています。
2024年後半に登場するx86 CPU「Strix Point」もAI PC分野において期待を集めています。Strix PointではAI TOPSが最大3倍向上しXDNA 2 NPUだけで約50 TOPSに達すると予想されています。
ただし現在のPCハードウェア構成ではAIを統合したOSを動かす要件が満たせない、もしくはAI処理が遅くなってしまう場合があり、先に発表されたAMDのノートPC向け「Ryzen 8000」シリーズやIntelのノートPC向けCPU「Core Ultra」シリーズにおいて、AI動作を高速化するチップが導入されているのが記憶に新しいところです。
ハンドヘルドPC/ハンドヘルド・ゲーミングPC
Ryzen Z1/Ryzen Z1 Extreme
先に紹介したRyzen Z1とRyzen Z1 Extreme搭載のASUS ROG Ally、Lenovo Legion Goに注目が集まりました。
LenovoもハンドヘルドPC、ASUS ROG Ally対抗モデルをリリースしている話題です。Tom's Hardwareでは詳細なレビューがありますのでそちらも併せてご紹介いたします。所謂Nintendo Switch的な佇まいですが、搭載液晶モニタのスペックが注目ポイントです。
Ryzen Z1 Extremeを搭載した「Phoenix Edge Z1」は、3DMarkのFire StrikeテストとTime Spyテストでそれぞれ最高4,564と1,789のスコアを記録し、ETA PRIMEのゲーミングテストでは、GTA V、Street Fighter 6、The Elder Scrolls V: Skyrimなどのタイトルで「まずまずのパフォーマンス」を発揮することが示唆されています。
ゲームコンソール
Sony PS5 Pro
Sony PS5のアップデート版といった趣のPS5 Proのリーク情報が年末にかけて多く流れています。発表、リリースは2024年Q2以降ともいわれています。
当初は2024年11月の発売が有力視されていたが、最近の情報によると早ければ9月にも発表される可能性があるだろう、とのこと。
Microsoft Xbox
PS5同様、Xboxも細かいアップデート版が予想されていますが、2028年以降の展望にも興味深いポイントがたくさんあります。
同社は、プレゼン資料の中で「Zero MicrosoftからFull Microsoftへ」と説明していますが、Xboxが目指す「フルマイクロソフト」とはどのようなものでしょうか?
AMD ワークステーション/サーバー向け、組み込み向け
クライアント版とは別にワークステーション、サーバ向けCPUのRyzen Threadripperシリーズも新モデル発表。対応マザーボードもリリースされています。
日本時間2023年10月19日、AMDはワークステーションセグメントのRyzen Threadripper PROと、Ryzen Threadripper 無印(non-PRO)版を発表しました。
組み込み向けRyzenもZen4コアの新モデルになり、対応するX600チップセットも併せて発表されました。
組み込み向けRyzen「Ryzen 7000 Embedded」を発表しました。同時に「X600」チップセットの概要も発表。組み込み向けRyzenも遂にRyzen 5000 Embeddedシリーズからアップグレードされることになりました。
まとめ
- デスクトップPC向けZen4コアRyzen 7000シリーズ好調
- デスクトップPC向けZen3コアRyzen 5000シリーズCPU継続(いつまでかは"?")
- デスクトップPC向けRyzen 8000GシリーズはHawk/Phoenix Point流用?
- Ryzen 8000GシリーズにはZen4+Zen4c構成CPUもあり?
- ノートPC向けRyzen 8000 "Hawk Point" 発表。搭載PCは順次リリース
- +Zen4cコア構成Ryzen(Zen4+Zen4c)搭載ノートPC順次リリース
- ハンドヘルド・ゲーミングPC向けRyzen(Ryzen Z1/Z1 Extreme)好調
- Sony PS5、Microsoft Xbox共にハードウェアアップデートの予定あり
- Zen5コアRyzenは2024年~(2025年?)
- ワークステーション、サーバー、組み込み向けRyzenも新モデル発表