IntelやAMD CPUの著者用振り返り記事を上梓いたしましたが、dGPUの振り返りもしていきます。まずはRadeon RX7900Mを発表したAMDのノートPC用dGPUから。iGPU(CPU / APU内蔵GPU)の話題も併せて再確認したいとおもいます。
AMD ノートPC用dGPU
AMD Radeon RX 7900M
AMDは米国時間2023年10月19日、RDNA3アーキテクチャ採用のノートPC向けdGPU「Radeon RX 7900M」を発表しました。AMDはノートPC向けdGPUにおいても「1440pで快適なゲームプレイ」を標榜するようになってきました。
グラフィックスメモリ容量が16GBと,ノートPC向けGPUとしては大容量なのがポイントだ。AMDによると,解像度2560×1440ドットで,快適にゲームをプレイできるという
スペック
- コードネーム:Navi31
- アーキテクチャ:RDNA3
- CUs:72
- Shaders / TMUs / ROPs:4,608 / 288 / 128
- メモリ:16GB GDDR6
- メモリバス:256bit
- メモリ帯域:576.0GB/s
- 動作クロック:1,825MHz
- ブースト最大クロック:2,090MHz
- AMD Infinity Cache:64MB
- TGP:180W
前世代のハイエンドRadeon RX 6800Mに対してCUsはプラス32、搭載メモリはプラス4GB、メモリバスが192bitから256bitへ、帯域は336.0GB/sから576.0GB/sとクロックは下がりましたが、メモリ周りが強化されているスペックとなりアーキテクチャがRDNA2(*1)からRDNA3(*2)へ、製造プロセスも7nm FF(TSMC N7)から5nm(TSMC N5/N6)へと順当に進化しています。
*1:Radeon RX 6800Mのコードネームは「Navi22 XTM」
*2:Radeon RX 7900Mのコードネームは「Navi31」
AMD Radeon RX 7000M / 7000Sシリーズ
2023年1月6日、CES 2023にてノートPC向けグラフィックス「AMD Radeon RX 7000シリーズ」を発表しました。Radeon RX 7900Mは、これらシリーズの現時点におけるハイエンドdGPUとなります。
Radeon RX 7000シリーズは、「AMD RDNA 3」アーキテクチャーを採用し、次世代のハイエンドノートPCで超高画質設定での1080pゲームや高度なコンテンツ制作アプリケーションを実行できるように設計されている。
AMD Radeon RX 7000M / 7000Sシリーズ ラインナップ
ラインナップは以下の通り。
- Radeon RX 7600M XT:Navi33, クロック/1,437MHz, メモリ / 2,250MHz, 16GB, GDDR6, 256bit, Shaders/2,048, TMUs/128, ROPs/64
- Radeon RX 7600M:Navi33, クロック/1,500MHz, メモリ / 2,200MHz, 16GB, GDDR6, 256bit, Shaders/1,792, TMUs/112, ROPs/64
- Radeon RX 7700S:Navi33, クロック/1,500MHz, メモリ / 2,250MHz, 8GB, GDDR6, 128bit, Shaders/2,048, TMUs/128, ROPs/64
- Radeon RX 7600S:Navi33, クロック/1,500MHz, メモリ / 2,000MHz, 8GB, GDDR6, 128bit, Shaders/1,792, TMUs/112, ROPs/64
AMD Radeon RX 7600M XT / Radeon RX 7600M
Radeon RX 7600M XTとRadeon RX 7600Mは、ゲームやコンテンツ制作向けのスペックを備えたノートPC用dGPUとしています。Radeon RX 7600M XTの場合、一部の1080pゲームプレイにおいて前世代よりも平均26%高いパフォーマンスを謳っています。
GPD G1
Radeon RX 7600M XTで話題になったのが、今夏リリースされた外付けdGPUボックス(ドック)のGPD G1でしょうか。Thunderbolt 3/4およびUSB4を搭載した近年のノートPCなどに対応し、GPD製品以外の製品でも利用できるGPU内蔵ドッキングステーションです。
本体サイズは約225×111×30mm、重量は920gで、UMPCや薄型軽量のモバイルノートPCとともに容易に持ち運んで使える。
GPD eGPU G1 Radeon RX 7600M XT搭載 グラフィックスカード拡張ドック GPD G1(including USB 4 cable)
世界最小クラスをうたうポータブルeGPUボックス「GPD G1」の販売がスタートした。ハイビーム 秋葉原本店では実機展示も行われている。店頭価格は108,800円で、同店によるとOCuLinkケーブルについては後日発売予定とのこと。世界最小クラスをうたうポータブルeGPUボックス「GPD G1」の販売がスタートした。ハイビーム 秋葉原本店では実機展示も行われている。
AMD Radeon RX 7700S / Radeon RX 7600S
Radeon RX 7700S / Radeon RX 7600Sは、薄型軽量ノートPC用として設計される「末尾S型番dGPU」です。前世代「Radeon RX 6000S(RDNA2)」シリーズのRDNA3版といえるでしょう。ゲーム性能を強化し、最新のゲームやコンテンツ制作を支える高いパフォーマンスを100W以下の電力で提供する、としています。
Radeon RX 7700Sの場合、一部の1080pゲームプレイにおいて前世代より平均29%高いパフォーマンスを謳っています。
RX 6000Sシリーズは、薄型ノートPC向けと位置づけられる製品で、高い性能を実現しながらも、より薄型のノートPCを設計することを可能になる。
AMD Radeon RX 7600M XT ベンチマーク
3DMarkのベンチ結果がvideocardz.comに出ており、Fire Strike(DX11 1080p)ではNVIDIAのノートPC向けdGPU「GeForce RTX4070/RTX4060」のスコアを上回っています。Time Spy(DX12 1440p)ではノートPC向けGeForce RTX4060とほぼ同等のスコアです。
In other words, the results may vary, but it is clear that the competition in the mid/entry-level segment will be tight.
AMD Radeon RX 7600M XT GPU matches GeForce RTX 4060 in 3DMark TimeSpy - VideoCardz.com
以下、videocardz.comに掲載されているノートPC用dGPUの簡易スペック表を引用いたします。ただし、Radeon RX 7900Mリリース以前の記事なので、Radeon RX 7900Mのスペック記載はありません。
AMD Radeon RX 7000M / 7000Sシリーズ まとめ
Radeon RX 7600M XTのベンチスコアから素性そのものは良さそうにみえますが、実ゲームプレイの性能はまた別の話。NVIDIA dGPUへの最適化が施されている場合が多く、その点AMD dGPUは不利な場合が多いからです。この辺りはアーキテクチャを同じくするNavi/RDNA以降のAMDデスクトップ向けdGPUシリーズと同様でしょうか。
また、搭載ノートPCの絶対数が少なく、そもそも買えない・利用できない場面が多いのが実情。ノートPCにおけるAMD CPU採用例は徐々に多くなっている印象がありますので、今後はAMD dGPU採用ノートPCも期待したいところです。
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AMD ノートPC用iGPU(内蔵GPU)
ノートPC用AMD Ryzen 7000シリーズのCPU/APU概要は振り返り記事に記載いたしましたので、本稿では同CPU/APUのiGPU(内蔵GPU)をチェックしていきたいと思います。
RDNA3ベースの内蔵GPUは「Radeon 780M」と命名され、Ryzen 9 7940HSとRyzen 7 7840HSではCU 12基構成
ノートPC用Ryzen 7000シリーズは、Zen4アーキテクチャの新規製品と過去製品のリネーム品・再設計品が混在しているのは先の記事に記載した通りです。また、Ryzen 7045は基本的にdGPUと組み合わせるCPUという意図があるためiGPUの仕様も少し違います。把握が大変です。
そのため、PC Watchのわかりやすい表を引用いたします。
- Ryzen 7045:RDNA2(CUs 2)
- Ryzen 7040:RDNA3(CUs 12)
- Ryzen 7035:RDNA2(CUs 12)
- Ryzen 7030:Vega(CUs 8)
- Ryzen 7020:Vega(CUs 2)
Ryzen 7040のみRDNA3世代のiGPUを搭載していますが、上記PC Watchの表にあるCUs数はRadeon 780Mと名付けられたiGPUの数値です。
RDNA3世代iGPU
Radeon 780MはRyzen 9 7940HSとRyzen 7 7840HS、7840Uに搭載され、Ryzen 5 7640HSと7640UはRadeon 760Mと呼ばれるCUs 8品です。それぞれ動作クロックが微妙に違います。把握が大変すぎです。
- Ryzen 9 7940HS:Radeon 780M(RDNA3 / CUs 12 / クロック 2,800 MHz)
- Ryzen 7 7840HS:Radeon 780M(RDNA3 / CUs 12 / クロック 2,700 MHz)
- Ryzen 5 7640HS:Radeon 760M(RDNA3 / CUs 8 / クロック 2,600 MHz)
- Ryzen 7 7840U:Radeon 780M(RDNA3 / CUs 12 / クロック 2,700 MHz)
- Ryzen 5 7640U:Radeon 760M(RDNA3 / CUs 8 / クロック 2,600 MHz)
AMD Radeon 780M / Radeon 760Mレビュー
notebookcheck.netでRadeon 780Mと760Mのベンチマークを公開しています。
In general, it remains true that the Radeon 780M is only slightly ahead of the older Radeon 680M. The 760M had a significantly better showing, with a substantial boost in performance of 25% to nearly 50% over a snappy variant of the previous Radeon 660M (in the ThinkPad T16).
3DMark Fire StrikeとTime Spyの結果グラフをnotebookcheck.netの同記事から引用いたします。前世代からどのくらい伸びたのか?という点でRadeon 760Mが高評価、Radeon 780Mはイマイチ。ただし、評価時ドライバの完成度が低いのでスコアが伸びない点を強調しています。
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