IntelやAMD CPU、AMDノートPC用dGPU/iGPUの著者用振り返り記事に続き、サイト更新できていなかった時期最大のトピックといえるIntelデスクトップPC用dGPU(グラボ)の振り返りをしたいと思います。
IntelデスクトップPC向けArc Aシリーズ
Intelグラボは本稿執筆時において以下5種類が確認できます。
- A770
- A750
- A580
- A380
- A310
北米時間2022年8月8日にはワークステーション向けの「Arc Pro A」シリーズdGPUを発表していますが、本稿はデスクトップ向けdGPUをチェックしていきます。
第1弾として,小型デスクトップPC向けの「Arc Pro A50」と「Arc Pro A40」,ノートPC向けの「Arc Pro A30M」という3製品をラインナップする。いずれも,リアルタイムレイトレーシングや,高画質なビデオコーデック「AV1」のエンコードへの対応が特徴だ。
AMD RadeonやNVIDIA GeForce同様、性能差を末尾数字違いで差別化しているのでIntel dGPU内の序列がわかりやすいラインナップと感じます。日本国内においてはIntelリファレンス、SPARKLE、ASRockがIntelグラボを製品展開しており、ざっくりと以下のような価格帯(価格com調べ)となっています。
- A770:5万円前後
- A750:4万円前半
- A580:3万円中盤
- A380:2万円前半
A310は本稿執筆時の新製品。SPARKLEから補助電源不要のショート基盤グラボ。約1.68万で販売開始されているようです。
インテルが「ハイパフォーマンスなゲーム」向けと位置付ける上位のArc 7に対し、Arc 3は「メインストリーム・ゲーム」向けで、人気ゲームで滞りのないプレイを楽しむことができるとしている。
Arc 3には上位のA380と下位のA310の2種類があり、A380の主な仕様はXe-core数が8、メモリーが6GB GDDR6、A310の主な仕様はXe-core数が6、メモリーが4GB GDDR6。グラフィックス・クロックはどちらも2,000MHz。
SPARKLE
Sparkle Intel Arc A310 ELF 4GB GDDR6 シングルファン SA310E-4G
筆者自身、SPARKLEというメーカーはIntelグラボにて初見だったので調べたところ台湾のメーカーでした。ThunderboltのExternal BOXや汎用ドッグを製品としてラインナップしています。
日本国内ではアユートが販売代理店をしているようです。
ちなみに本稿執筆時点においてIntelのArc Aシリーズ紹介ページにはA580(5番台)の掲載がありません。ハイパフォーマンスレンジがArc 7シリーズ、Arc 3シリーズはメインストリームレンジと表現されています。
先ほど「末尾の数字で性能差をあらわしていてわかりやすい」と記しましたが、Intel dGPU内の序列の話であって、対AMD Radeon、対NVIDIA GeForceではどのくらいかよくわかりません。Arc A770の場合は7番台だからAMD Radeon RX 7700 XTとかNVIDIA GeForce RTX 3070とかその辺なんでしょうか?気になります。
Intel Arcシリーズ基本概要
発表自体は北米時間2021年8月14日になされました。
Intel Arcの第1弾となるDirectX 12世代GPU「Alchemist」(アルケミスト,開発コードネーム)は,ハードウェアによるリアルタイムレイトレーシング機能や,AIベースの超解像機能を搭載して,2022年第1四半期に登場する予定とのことだ。
Intel Arcシリーズのフルスペック版は以下の特長を備えています。
- TSMCの6nmプロセスで製造
- PCI-Express 4.0 x16
- GDDR6(メモリバンド幅は256bit)
- XMXマトリックスエンジン(AIディープラーニング)
- レイトレーシング対応
- XeSS(アップスケーリングテクノロジー。DLSS 2やFSR 2.0と同等のもの)
- 最大8K / 60Hz最大2つのディスプレイ出力が可能
- 4Kの場合、120Hz x4出力
- 1440pまたは1080pの場合、360Hz x4出力
- VESA Adaptive SyncおよびIntel Smooth Sync機能をサポート
- DisplayPort 2.0 x2
- HDMI 2.0b x2
- AV1のハードウェアデコードとエンコード
- H.265 HEVCおよびH.264 AVCハードウェアデコード
当たり前ですが現代的なスペックに仕上がっています。
Intel Arc A770, A750
本稿執筆時点、IntelのデスクトップPC向けdGPU(グラボ)最上位モデルがArc A770です。
With the amazing-looking Intel Arc A770, the blue team is making a push to offer a capable mid-range graphics card product at affordable pricing. Intel is including a lot of modern tech like AV1 video encode, hardware-accelerated ray tracing units and more on their newest release.
同時にすぐ下のモデルとなるArc A750もデビューしており、上記TechPowerUPでは同じタイミングで記事化しています。
Intel is pricing their new Arc A750 graphics card aggressively at just $290. In our review we ran extensive tests and can confirm that it offers decent performance for 1080p and 1440p gaming. It encounters strong competition though from AMD and NVIDIA, who have several products in this price range.
Arc A770レビュー記事にあるリファレンスカード裏面がかっこいい。
スペック
スペックは、AMD RadeonやNVIDIA GeForceも並ぶ表を引用いたします。
※Intel Arc A770のレビュー記事から引用したのでArc A770がハイライトされています
Arc A770, A750性能比較
Arc A770 / A750のスペック(数値)だけを見るならば、コア数がNVIDIA GeForce RTX 3000シリーズに届いていませんがそれなりに期待できそうです。
実ゲームのフレームレートチェック環境はAMD Ryzen 7 5800X、DDR4-4000(16GB) でResizable BAR : Enabled、ドライバは以下の通りです。
平均FPS
1080pの平均のみ引用いたします。
Arc A770, A750性能比較まとめ
Unreal Engine 4のBorderlands 3とFrostbiteのBattlefield V(共にDX 11)のフレームレートが伸びていません。DX 12世代のCyberpunk 2077、Assassin's Creed Valhallaでは期待しているであろうフレームレートがでていると感じます。しかしDX 11世代が全くダメというわけではなく、The Witcher 3: Wild HuntではCyberpunk 2077やAssassin's Creed Valhallaと同じような挙動をみせているため、TechPowerUpではドライバが原因だと述べています。
Taking a closer look at our individual benchmarks, it looks like DirectX 11 performance is the most challenging task for Intel. In many of these tests, performance is considerably lower than on AMD/NVIDIA, which suggests Intel needs more driver optimizations here.
Intel Arc A770 Review - Finally a Third Competitor - Value & Conclusion | TechPowerUp
TechPowerUPの25ゲームからなるテストでは、1440pの場合はやや荷が重く4kプレイは不向きな結果と読み取れます。そのため1080pでプレイするのが最適かもしれません(そのため平均FPSグラフは1080pのみ引用)。
Arc A770の場合、1080pにおいてAMD Radeon RX 6600やRX 5700 XT、NVIDIA GeForce RTX 2070を上回っており、GeForce RTX 3060に匹敵する性能といっても差し支えないでしょう。1080p環境でのArc A770はAMD RadeonやNVIDIA GeForceのミドルレンジ帯グラボと戦える性能をだせています。Arc A750の場合、このグラフ群のみで判断するならば中途半端な結果と言わざるを得ません。
Intel Arc Aシリーズの特性なのかわかりませんが、アイドル時の消費電力が高いことが気になります。AMD、NVIDIAのハイエンドより高い……。
その他、TechPowerUpでのまとめは以下の通りです。
- レイトレーシング無効時に性能が向上
- DirectX 11の性能は AMD / NVIDIA に比べて低い
- AV1エンコーディングおよびDisplayPort 2.0対応は良い
- TSMCで製造されたものの効率性は改善の余地あり
- XeSSは印象的で画質と性能を両立
- オーバークロックは可能
- 価格と供給状況に注意
Intel Arc A750は価格次第
上記グラフ結果だけの見立てでは中途半端と言わざるを得ないArc A750でしたが、実売価格次第で化けるモデルだと考えます。AMD Radeon RX 6700 XTやNVIDIA GeForce RTX 3060 Tiより安くRX 6600やRTX 3060レベルの価格、という条件であればコストパフォーマンスに優れたモデルと言えます。本稿執筆時、RX 6700 XTやRTX 3060 Tiは約5.5万円~6万円台、RX 6600やRTX 3060は約3万円前後~3万円台です。
コストパフォーマンスという観点ならばArc A770はマイナスに転じてしまうでしょう。本稿執筆時点でのIntelグラボお買い得モデルは、Arc A750だったりするのかもしれません。
Sparkle Intel Arc A750搭載グラフィックカード OC版 デュアルファン「ORC」シリーズ [ SA750C-8GOC ]
Intel Arc A580
dGPU自体の発表は2022年9月でしたが、日本国内においてグラボ製品が発売されたのは2023年10月となってしまったのがArc A580です。
「Intel Arc A580」ついに発売へ。シリーズ最後のピースの性能やいかに?
スペックからは上位モデルであるArc A750のスペック制限版という感じに見えます。解像度のターゲットは1080pで、価格帯的にAMD Radeon RX 6600やNVIDIA GeForce RTX 3050辺りがライバルだと思いますが、PC Watchの記事ではNVIDIA GeForce RTX 4060と比較(上位モデルのArc A750も)しており、興味深い記事となっています。
AMD、NVIDIA他デスクトップdGPUとのスペック比較はTechPowerUpの表がわかりやすいので引用いたします。
Arc A580性能比較
Arc A580の実ゲームフレームレート比較は弊サイト別記事もチェックしていただけると幸いです。
Arc A580のネックは実売価格
本稿執筆時リリース直後ということもあり上位モデルのArc A750と価格差がネックです。時間がたてば差が出てくると思いますので、購入を検討しているならば待つのもあり。
Intel Arc A380
エントリーレベル「Arc 3」シリーズに属するdGPUで、日本国内では2022年Q3にIntel Arc Aシリーズ最初の製品としてリリースされました。
Arc Aシリーズはこれから登場するであろうインテル製dGPUの先導役を担っている。すでにロードマップでは後継として開発コードネーム「BattleMage」、「Celestial」、「Druid」が出てくることが判明している。と
ショート基盤がコンパクトPCに最適です。
Sparkle Intel Arc A380搭載グラフィックカード シングルファン「ELF」シリーズ [ SA380E-6G ]
Arc A380性能比較
実売価格的にもAMD Radeon RX 6400とのマッチアップが面白そうですが、補助電源なしでロープロ、1スロットグラボがリリースされているRadeon RX 6400は違った魅力があり、評価は分かれるかもしれません。
In our A380 review we said we'd be tempted to roll the dice on the A380 in the hope that Intel comes through with the driver support, but after spending more time with it, we're not so confident about willing to take that bet. With half decent drivers it would be a much better product than the Radeon 6400, but if and when they'll get there is hard to say.
ホグワーツ レガシー(Hogwarts Legacy)
Engine : Unreal Engine 4
人気ゲームの例としてホグワーツレガシーのフレームレートグラフをピックアップいたします。1080pミディアム品質です。
Arc A380は30fpsを超えるあたりで、AMD Radeon RX 6400やNVIDIA GeForce GTX 1650と同じレベルです。ちなみにArc A770の場合でも100fpsは超えらていません。
Arc A380の性能比較は弊サイト別記事でもチェックしていただけると幸いです。
ドライバ
4gamerの記事によると2023年に2回の大型アップデートがあったようです。
筆者はR9 270Xの頃からの浅いAMD Radeonユーザーですが、ATi / AMDのグラフィックドライバの不出来っぷりは古のATi時代からの伝統芸として有名なのは知っていました。Radeon Setting(現Radeon Software)は怪しい場面ありますけれど、個人的にFiji~Polaris辺りからある程度安定していると感じます。
Intelも一時期のATi / AMDと同じようにドライバの不出来を指摘され続けているのはある意味通過儀礼なのかもしれません。NVIDIAのドライバも鉄板ではありませんし、なかなか難しい部分なのでしょう。
Arc A580の「Xe Media Engine」による「AV1エンコード」対応に惹かれるのであれば,魅力的な存在だが,ゲームプレイを重視するなら,ドライバソフトが成熟してから購入しても遅くはないはずだ。