前回のIntel CPU編に続き、本稿はAMD CPU編(前編)です。本サイト(ブログ)の更新期間が開いてしまった期間、著者自身追っていない事が多いため改めて振り返り確認作業をしたいと思い本稿を記します。
前後編の前編となります。
2023年10月21日1時追記あり
2023年10月22日2時追記あり
後編はこちらです。
Zen4ベースのRyzen 7000シリーズ
AMD CPUに関する記事は、Zen4+RDNA3を採用するノートPC向けCPU/APUのコードネーム「Phoenix(記事執筆時はPhoenix Point)」の噂レベル記事、また、デスクトップZen4 CPU向けチップセットの噂記事近辺で止まっている状況です。
ノートPCの話題ではこちらの記事を最近上梓いたしました。
デスクトップ版Ryzen 7000シリーズ
X型番
デスクトップ版Ryzen 7000シリーズは米国時間2022年8月29日に発表され、国内時間2022年9月30日19時より販売されました。
Zen 4を採用するCPU製品には,3種類のバリエーションがあるという。今回発表となるデスクトップPC向けRyzenは「Raphael」(ラファエロ),サーバー向けCPUであるEPYCブランドは「Genoa」(ジェノア),データセンター向けEPYCが「Bergamo」(ベルガモ),そしてAPU向けRyzenが「Phoenix」(フェニックス)だ。
まずは型式末尾に「X」がつく4種類、ハイエンド帯のRyzen 9 7950XとRyzen 9 7900X、メインストリーム向けのRyzen 7 7700XとRyzen 5 7600Xがローンチ。著者はRyzen 9の170WというTDPに驚きました。
- Ryzen 9 7950X:16コア32スレッド,定格クロック4.5GHz,最大クロック5.7GHz,L2キャッシュ容量16MB,L3キャッシュ容量64MB,TDP 170W
- Ryzen 9 7900X:12コア24スレッド,定格クロック4.7GHz,最大クロック5.6GHz,L2キャッシュ容量12MB,L3キャッシュ容量64MB,TDP 170W
- Ryzen 7 7700X:8コア16スレッド,定格クロック4.5GHz,最大クロック5.4GHz,L2キャッシュ容量8MB,L3キャッシュ容量32MB,TDP 105W
- Ryzen 5 7600X:6コア12スレッド,定格クロック4.7GHz,最大クロック5.3GHz,L2キャッシュ容量6MB,L3キャッシュ容量32MB,TDP 105W
AMDの新世代CPU「Ryzen 7000」シリーズが9月27日に発売決定! 価格はほぼ据え置きで性能は前世代から最大29%向上
無印版
追って国内時間2023年1月13日11時より、型式末尾に「X」が付かない動作クロックと標準TDPを65Wに抑えた無印のRyzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600が販売開始されました。
既存のRyzen 7000 Xモデルシリーズでは,いずれもTDPが100Wを大きく超えていた。(中略)それに対して,無印版のRyzen 7000シリーズは,標準のTDPが65W,PPTが88Wと,既存製品と比べて控えめである。ただ,TDPを低く抑えるため,定格クロックも4GHz未満に抑えられている。
コア・スレッド数や搭載キャッシュメモリは変えずに、定格クロックと最大クロックを下げてTDPを抑えています。
- Ryzen 9 7900:12コア24スレッド,定格クロック3.7GHz,最大クロック5.4GHz,L2キャッシュ容量12MB,L3キャッシュ容量64MB,TDP 65W (Max TDP 88W)
- Ryzen 7 7700:8コア16スレッド,定格クロック3.8GHz,最大クロック5.3GHz,L2キャッシュ容量8MB,L3キャッシュ容量32MB,TDP 65W (Max TDP 88W)
- Ryzen 5 7600:6コア12スレッド,定格クロック3.8GHz,最大クロック5.1GHz,L2キャッシュ容量6MB,L3キャッシュ容量32MB,TDP 65W (Max TDP 88W)
4gamerの記事にも言及がありますが、定格クロックがX版に比べて無印版は約1GHz程度下げられているのが注目すべき点でしょうか。PCの使い方によっては定格クロックの高さをそれほど重要視しない場合もあり、消費電力の低さ(X版と比べて)がメリットになる場面もあります。
(2023年10月21日追記ここから)
AMD Ryzen 5 7500F
iGPU(内蔵GPU)を搭載しないモデルで、OEM向けとして2023年9月に世界市場投入されました。元々はMainland China向けに出荷していたもの。
グローバル向けはOEMへの供給のみとなる模様。中国ではWraith Stealthを同梱したボックス版の販売が行われるという。
iGPU非搭載で価格を抑えたRyzen 5 7600といった感じで、定格クロックと最大クロックがそれぞれRyzen 5 7600より0.1GHz低いスペックとなっています。
日本国内ではOEM専用CPUのため、BTO PCで採用されています。カスタマイズから選べる場合が多いのでチェックしてみてください。
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ビデオカードは低負荷時にファンが停止するセミファンレスモデルを採用。これらにより、Micro-ATXベースでサイズ210(W)×418(D)×408(H)mmのミニタワーPCでありながら、アイドル時や低負荷時はほぼ無音。高負荷時でも騒音がほとんど気にならないPCとなっている。
(2023年10月21日追記ここまで)
X3D版
さらに米国時間2023年2月1日には、型番末尾に「X3D」が付く大容量キャッシュ「3D V-Cache」を搭載した、Ryzen 9 7950X3D、Ryzen 9 7900X3D、Ryzen 7 7800X3Dを発表(先に米国時間2023年1月4日に初披露目)し、もちろんですが本稿記載時にはリリース済です。
Ryzen 7000X3Dでは,CPUダイの上にキャッシュメモリを積層することで,通常のデスクトップPC向けRyzenと比べて,L3キャッシュメモリ容量の増加による性能向上が見込めるという。
実際,前世代の3D V-Cache搭載CPUである「Ryzen 7 5800X3D」では,CPUコア数で上回るハイエンドCPUよりも高いゲーム性能を発揮していた。
Ryzen 9 7950X3DとRyzen 9 7900X3Dは最大クロックこそX型番据え置きですが、定格クロックは下げています。Ryzen 7 7800X3Dはどちらも少し下げています。
TDPは全てのモデルで120Wとしています。
- Ryzen 9 7950X3D:16コア32スレッド,定格クロック4.2GHz,最大クロック5.7GHz,L3キャッシュ容量144MB,TDP 120W
- Ryzen 9 7900X3D:12コア24スレッド,定格クロック4.4GHz,最大クロック5.6GHz,L3キャッシュ容量140MB,TDP 120W
- Ryzen 7 7800X3D:8コア16スレッド,定格クロック4.2GHz,最大クロック5.0GHz,L3キャッシュ容量104MB,TDP 120W
Ryzen 9 7950X3DとRyzen 9 7900X3Dに対してRyzen 7 7800X3DはCPUの仕組みが違うので厳密にはモノが違うのですが、X3D型番Ryzen 7000シリーズはL3キャッシュを増大させることでゲームパフォーマンス向上を目指すハイエンドセグメント帯CPUといえます。
ノートPC版Ryzen 7000シリーズ
デスクトップPC向けのRyzen 7000シリーズは比較的わかりやすい流れでしたが、ノートPC向けのRyzen 7000シリーズの場合、Ryzen 7000シリーズだからといってZen4ではないパターンもあるので把握が大変です。
また、ノートPCだけではなくミニPCにも搭載されるCPU/APUなのでチェックは必須です。
まずは米国時間2023年1月4日の基調講演内でRyzen 7045、Ryzen 7040、Ryzen 7035、Ryzen 7030、Ryzen 7020各ラインナップが発表されました。
AMDのノートPC向けCPU/APU過去製品では「HX」「HS」「U」の識別子を末尾に入れてターゲットとする製品カテゴリを判別しています。ノートPC向けRyzen 7000シリーズでも「HX」「HS」「U」の識別子は踏襲されていて、その点ではわかりやすいラインナップといえるでしょうか。
HX型番はRyzen 7045のみに限られているようですが、HS型番はRyzen 7040の他、Ryzen 7035にも見られます。
ノートPC版Ryzen 7000シリーズの製品名
少しわかりにくいのですが、(例えば)Ryzen 7045の「0」の桁部分はシリーズ名で表記される場合の数字であり、製品では違う数字が入ります。
また、Ryzenのグレードを示す「9」と「7」、「5」といった数字も入ります。
製品名の例:Ryzen 9 7945HX
- Ryzen CPU内グレードを示す「Ryzen 9」
- Ryzen 7000シリーズを示す「7」
- 「0」の部分はRyzen 7045内での相対的な性能を示す数字(例は9で一番上)
- 「45」の部分はノートPC向けRyzen 7000シリーズの区分
- 「HX」の部分はターゲットカテゴリの識別子
ノートPC向けAPUとして「Ryzen 7045」シリーズと「Ryzen 7040」シリーズが発表となった。ただ,新APUにはそれ以外に,「Ryzen 7035/7030/7020」もラインナップされている。
Ryzen 7045
Ryzen 7045は「"ノートPC向けにチューニングした"Zen4ベースのデスクトップPC向けRyzen 7000シリーズそのもの」だとしています。
最上位モデルのRyzen 9 7945HXは16コア32スレッド対応です。
ノートPC向けなので、一応、GPUを内蔵しているのですがおまけ程度。念のためという感じでしょうか。そのため、Ryzen 7045を搭載するノートPCは基本的にdGPUを組み合わせる形になる、と解説されています。
基調講演内のスライドに示された各モデルのスペックをそのまま記します。
- Ryzen 9 7945HX:16コア32スレッド,定格クロック2.5GHz,最大クロック5.4GHz,キャッシュ容量80MB,TDP 55-75W+
- Ryzen 9 7845HX:12コア24スレッド,定格クロック3.0GHz,最大クロック5.2GHz,キャッシュ容量76MB,TDP 45-75W+
- Ryzen 7 7745HX:8コア16スレッド,定格クロック3.6GHz,最大クロック5.1GHz,キャッシュ容量40MB,TDP 45-75W+
- Ryzen 5 7645HX:6コア12スレッド,定格クロック4.0GHz,最大クロック5.0GHz,キャッシュ容量38MB,TDP 45-75W+
スペック上の最大クロックは全てのモデルで5GHz以上という部分はすごいですね。
(2023年10月22日追記ここから)
Ryzen 9 7945HX3D
2023年7月28日にノートPC向けとしては初となる3D V-Cache搭載CPU「Ryzen 9 7945HX3D」を発表しました。
Ryzen 9 7945HXとは,デスクトップPC向けの16コア32スレッド対応「Ryzen 9 7950X」をノートPC向けに改良した製品だ(関連記事)。つまり,Ryzen 9 7945HXに3D V-Cacheを載せたRyzen 9 7945HX3Dは,Ryzen 9 7950X3DをノートPC向けに変更した製品と理解していいだろう。
「競合がこの性能を得るためには,100W超のTDPが必要。Ryzen 9 7945HX3Dは,3D V-Cacheによって極めて高い電力効率を実現した」とし、「Ryzen 9 7945HX3Dは,世界で最も高いゲーム性能を持つノートPC向けプロセッサである」とAMDはアピールしています。
(2023年10月22日追記ここまで)
Ryzen 7040
Ryzen 7045はデスクトップPC向けRyzen 7000シリーズと同じく「CPUダイとI/Oダイを相互接続して1パッケージ化したチップレット構成のCPU」と解説されていますが、Ryzen 7040は、CPUとI/O部分を単一のダイで製造し、Zen4アーキテクチャCPUとRDNA3アーキテクチャGPUの組み合わせを採用したAPUとのこと。
本稿執筆時点でも最新アーキテクチャとなるRDNA3ベースの内蔵GPUは「Radeon 780M」と命名され、Ryzen 9 7940HSとRyzen 7 7840HSではCU 12基構成と解説されています。「ノートPC向けRyzen 7040のグラフィクス性能はPS5に肉迫する」との同記事内表現は、スペック上の話とはいえ惹きつけられます。
Ryzen 7040の場合、dGPU前提ではなく内蔵GPU利用が前提にあるモデルのように感じられます。
Ryzen 9 7940HSのRadeon 780Mは,動作クロックが3GHzとのことなので,32bit浮動小数点(FP32)理論性能値を求めてみるとこうなる。
12 CU×128 SP×2 FLOPS×3GHz=9.2 TFLOPS
これは,PlayStation 5(以下,PS5)の10.3 TFLOPSに迫る高性能な内蔵GPUであることが分かる。
ノートPC向けRyzenや3D V-Cache版Ryzenの正体とは? AMDの講演で明らかにされなかった新CPUと新GPUの詳細が判明
基調講演内のスライドに示された各モデルのスペックをそのまま記します。
- Ryzen 9 7940HS:8コア16スレッド,定格クロック4.0GHz,最大クロック5.2GHz,キャッシュ容量40MB,TDP 35-45W
- Ryzen 7 7840HS:8コア16スレッド,定格クロック3.8GHz,最大クロック5.1GHz,キャッシュ容量40MB,TDP 35-45W
- Ryzen 5 7840HS:6コア12スレッド,定格クロック4.3GHz,最大クロック5.0GHz,キャッシュ容量38MB,TDP 35-45W
Ryzen 7045各モデル同様、スペック上の最大クロックは全てのモデルで5GHz以上。キャッシュ容量が少ないですが、定格クロックはRyzen 7045各モデルより高めに設定されています。
カタログスペックで読み取れることは、Ryzen 7045各モデルよりTDPが低く平均クロックが高いため性能とのバランスが高いモデル群、ということです。
先にdGPUとの組み合わせではなく内蔵GPU利用が前提だろうと述べましたが、dGPUと組み合わせたノートPCもアリな気がします(と、思ったら実際は数モデルあるようです)。
Ryzen 7035、Ryzen 7030、Ryzen 7020
4gamerの記事内では、Ryzen 7035とRyzen 7030はリネーム品で、Ryzen 7020はZen2世代のCPU/APUを改良したコードネーム「Mendocino」と呼ばれるエントリー向け、と解説されています。
- Ryzen 7035:Ryzen 6000シリーズ(コードネーム:Rembrandt)に改良を加えてリネームしたもの。新たなコードネームは「Rembrandt-R」
- Ryzen 7030:Ryzen 5000シリーズ(コードネーム:Barcelo)に改良を加えてリネームしたもの。新たなコードネームは「Barcelo-R」
- Ryzen 7020:Zen2改良版。コードネームは「Mendocino」
Mendocinoは4コア8スレッドのZen 2世代のCPUコアを採用し、RDNA 2ベースの統合GPUとDDR5メモリコントローラを組み合わせたものです。
安価なサブマシンがほしいという人のニーズに応える製品になりそうだ。
価格は要問合せという製品ですが、日本国内向けにもDellからMendocino採用Chromebookがリリースされています。
14型ディスプレイ(WXGAまたはフルHD、タッチ対応モデルも用意)を内蔵するChromebookで、プロセッサとしてAMD APU(コードネーム:Mendocino)に対応しており、Athlon Silver 7120C~Ryzen 5 7520Cが搭載可能だ。
著者自身、1台欲しいかもしれません……。
後編に続きます。
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